カメラで画像を撮影し、色などを調整して、プリンターで出力するまでの全体のシステムを俯瞰してみましょう。理想的なシステムとは、何もしないシステムです。はてな?
そもそも、画像システムとは、どのようなものでしょうか。それは、光情報の伝達・再現のための変換をするシステムのことです。これから撮影しようとするシーンは、夜空の10のマイナス2乗(cd/m^2)(読み方:カンデラパースクウェアメータ)の明るさから日向の10の4乗(cd/m^2)までの明るさがあり、非常に広いダイナミックレンジがあります。人間の視覚系はこのうちのかなりの範囲をカバーして受光することができますが、デジカメなどに実装されている現在の撮像センサーは、これより狭い範囲しか受光することができないのが現状です。
それでは、どのようにして、ダイナミックレンジの狭さをカバーしているのでしょうか。
それは、写そうとしている被写界(被写体や背景を含む写そうとする領域)の輝度、照度を計測して、それが画像センサーの受光できる輝度、照度範囲に入るように調整をしているのです。それを露出といいます。これは、フィルム写真の時代に使われていた言葉ですが、デジカメの時代に入っても有効です。フィルム、乾板などの感光材料やCCD、CMOSなどの個体撮像素子を、レンズを通した光にさらすこと、またはカメラのレンズを通過してくる光の総量や、画像そのものの明るさのことをいい、これらはレンズの絞り(F値)と露光時間(シャッター速度)及びフィルム感度の組み合わせによって決まります。(Wikipedia、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9C%B2%E5%87%BA_(%E5%86%99%E7%9C%9F))
この露出を表す量としてEV値があります。
- EV値の絶対値は、ISO感度、f値(しぼり)、露光時間で決まる
- EV=0は、ISO感度100、f値1.0、露光時間1秒のときの適正な露出
- ISO感度の定義が若干メーカでばらつきがあるので、カメラの工業会では、許容値を設定している
撮りたい被写体の露出(EV値)を測って、その値を満たすISO感度、f値、露光時間を決めて、シャッターを切れば、適正な明るさの写真が取れるという仕組みです。
写真館やプロのカメラマンは、上の写真のような露出計を使ってEV値を測り、絞り値、露光時間を決めていましたが、今は、一眼レフカメラ内に露出計が組み込まれているので、このような装置を用意する必要はありません。
今のカメラには、さらにAE(Auto Exposure)の機構が組み込まれていますので、ほぼ自動で露出を決めてくれます。つまり、AEとは測定したEV値から自動的にf値(しぼり)、露光時間(シャッタースピード)、ISO感度を決めてくれる機能です。また、昔のフィルムカメラではISO感度はフィルムで固定でしたが、デジタルカメラではこれも変えられます。
絞り値とシャッタースピードを決めるとき、どちらかを優先して他を自動的に決めてやるので、2つのやり方が存在します。それが、シャッター速度(露光時間)優先AEと絞り優先AEです。その他にも両方を決めてくれるプログラムAEなど各カメラで工夫がされています。
この露出(EV値)は、被写界の照度を表す物理量であるLuxと関係があり、次の表のようになります。EV0(薄明り)の時は、照度でいうと2.5Luxにあたり、EV値が一つ増えるたびに、照度は2倍になっていきます。真夏のビーチの明るさであるEV16の時は、照度164kLux(k:キロは10の3乗)となります。また、室内で文書を読み書きするときは、1000Lux 位が適当と言われていますので、そのような環境での露出はEV9位となります。
次に、実際にカメラで撮った画像を見ていきましょう。下の二つのシーンは、どう見えますか?上の写真は手前にピントが合っていて、奥の方はボケています。下の絵は、手前、奥ともにピントが合ってますね。これは、絞り値を変えただけです。被写界深度といいますが、絞り値によって被写界深度が違うためにおこる効果で、これをうまく写真の表現に使う場面があります。スマホのカメラでは出ない効果ですね。
下の2枚も同じ違いです。表現の意図によって変えていくことができるわけです。
次回は、これらの映像システムの全体像に戻って、画像処理の役割をもう少し掘り下げてみましょう。